「デジタル社会と情報教育」ということで、仰々しく初めてしまったのですが、難しい話ではなく、現実の状況との関わりについて、平易にお話しして行きたいと思います。
前回は、私と高等学校の教科「情報」との出会いや、「情報」という学問を体系的に学ぶために高校の教員免許(情報)を取得したことを書きました。
今回から、具体的な教科書の中身に触れて行きたいと思います。
高等学校の教科「情報」の変遷
以前の科目構成
最初の教科「情報」
教科「情報」は、平成11年に初めて学習指導要領に登場しましたが、学校現場に適用されるまでには準備が必要なので、実際に授業が始まったのは平成15年(2003年)の高等学校入学生からです。
教科「情報」の最初の科目構成は、「情報A」、「情報B」、「情報C」というものでした。この3科目の中から1科目を選択して履修するようになっていました。
それぞれの科目の目標とするところについては、高等学校学習指導要領(平成11年3月)
には以下のように記載されています。
【情報A】
コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を通して、情報を適切に収集・処理・発信するための基礎的な知識と技能を習得させるとともに、情報を主体的に活用しようとする態度を育てる。
【情報B】
コンピュータにおける情報の表し方や処理の仕組み、情報社会を支える情報技術の役割や影響を理解させ、問題解決においてコンピュータを効果的に活用するための科学的な考え方や方法を習得させる。
【情報C】
情報のディジタル化や情報通信ネットワークの特性を理解させ、表現やコミュニケーションにおいてコンピュータなどを効果的に活用する能力を養うとともに、情報化の進展が社会に及ぼす影響を理解させ、情報社会に参加する上での望ましい態度を育てる。
これらの3つを比較すると、「情報B」が情報の科学的な理解を中心したやや理系的な内容になっているのに対し、「情報C」は情報社会への参画する態度を学ぶものとなっており文系的な内容、「情報A」はこれらの中間的な内容で、情報活用の実践的な力を養うことを狙いとしていました。
全国の高等学校における開講割合は「情報A」が約8割程度と他の科目を圧倒していました。科目の選択は生徒が自由に行えるわけではなく、学校側が開講科目を設定するというやり方が一般的だったようです。
改訂された教科「情報」
平成15年(2003年)に施行された学習指導要領(平成20、21年改訂)では、教科「情報」は、「社会と情報」及び「情報の科学」の2科目に再編されました。前項の「情報A」に当たる科目が無くなり、「情報B」が「情報の科学」へ、「情報C」が「社会と情報」へとそれぞれ発展させた内容となりました。
学習指導要領にはそれぞれの科目の目標が次のように記されています。
【社会と情報】
情報の特徴と情報化が社会に及ぼす影響を理解させ,情報機器や情報通信ネットワークなどを適切に活用して情報を収集,処理,表現するとともに効果的にコミュニケーションを行う能力を養い,情報社会に積極的に参画する態度を育てる。
【情報の科学】
情報社会を支える情報技術の役割や影響を理解させるとともに,情報と情報技術を問題の発見と解決に効果的に活用するための科学的な考え方を習得させ,情報社会の発展に主体的に寄与する能力と態度を育てる。
開講割合は「社会と情報」が約8割で、学校側が開講科目を設定するというやり方が主流なのは変わらなかったようです。
以下はそれまでの科目「情報A、B、C」と改定後の科目「社会と情報」及び「情報の科学」との関係を説明したものです。
【文部科学省 高等学校学習指導要領解説 情報編(平成22年1月)より】
現在の共通教科「情報」
令和4年度(2022年度)から
現在の科目構成となりました。
共通教科「情報」は、第3ステージとなった学習指導要領の改訂により、「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」となりました。今回は選択制ではなく、必履修科目として全員が履修する「情報Ⅰ」と、発展科目としての「情報Ⅱ」が設定されました。
概観すると、「社会と情報」と「情報の科学」が融合し、「情報の科学的な理解」という、「情報の科学」寄りの内容にシフトし、より技術的に高度な内容になっているという印象を受けます。
【文部科学省 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 情報編より】
さて、前置きがずいぶん長くなりましたが、
現在、高校生が全員学ぶ「情報Ⅰ」の教科内容と
私達が暮らすデジタル社会との関係について、
次回から考えて行きたいと思います。
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