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片耳物語⑥ ~ アンギオ検査

片耳物語
まー
まー

今回は、「検査入院」のメインイベント「アンギオ検査」のお話です。

検査入院のメインイベント

”本番”の手術ための入院に先立ち、その2か月ほど前に4泊5日の検査入院をしました。
CTやMRIをはじめ、肺活量、心電図、脳波、味覚、バランス感覚、聴力...。
もう、覚えていないほどたくさんの検査をこの検査入院で行いました。

都内在住で大学病院に近い場合は、何回かの通院で行う場合もあるそうです。
しかし、地方在住の私にとっては”通う”というのはコスト的にも肉体・精神的にも無理でした。

まぁ、病院の方でもそう考えていたと思いますが、「検査入院」一択で「通い」という選択肢はありませんでした。手術はおろか、入院も生まれて初めてだった私にとって、この検査入院は後から考えても良い”練習”になりました。

ハナシは元に戻りますが、その検査入院のメインイベント、アンギオ・グラフィー(Angiography)と呼ばれる検査についてお話しします。

アンギオ検査って何?

アンギオ検査というのはアンギオグラフィ(Angiography)という手法を用いて、体のあちこちの血管の様子を調べる検査のことです。

「アンギオ」は「血管の」という意味で「グラフィ」は撮影法とか造影法というような意味なので、日本語では血管造影法と呼ばれています。

ちなみに私たちが受けた脳の手術に関する血管の検査は、日本語では「脳血管造影検査」ということになります。

「血管造影検査」というのは、簡単に言うとレントゲンで血管を撮影するのですが、普通のX線写真では血管の中の血液と周りの人体組織とを明確に区別した写真が撮れません。それで、調べたい血管にカテーテルという細い管を入れて、そこから造影剤という体を通り抜けるX線の減り具合を強める薬を注入して撮影します。すると、血管と周りの組織との区別がはっきりして血管の様子がわかるようになるのです。こうした仕組みによって他の組織と明確に区別された、ピンポイントのレントゲン写真を撮影できるという訳です。

この検査をすることで、ターゲットとなる腫瘍の周りの血管の様子や腫瘍自体に栄養を送っている血管の有無など調べます。腫瘍に太い血管が入り込んでいると、手術の時、出血の危険が大きくなります。そういう場合は手術の前にあらかじめ問題のある血管を閉塞させる処置をするそうです。

いよいよ検査開始

私の場合、アンギオ検査は入院3日目の午後に行いました。
なにしろ、この検査入院の中で一番のイベントなので、実は前の日から緊張していました。
検査の説明を受けた時にも「手術並みの体制で行います」と告げられていましたので、なおさらですよね(^^;

病室で点滴の準備をするのですが、検査する医師のリクエストは左腕。私は右腕の方が血管が出やすいのに何故かなぁと思っていたら、検査室に行ってからわかりました。医師が私の右側で作業するので、右側で点滴をとると邪魔になるからなのですね。おそらく医師の利き腕で場所が変わるようです。

時間になると、あちこちをマジックテープで貼り合わせる青い検査着(手術用?)に着替え、16階の病室から看護師さんに連れられ、エレベータでずっと下の検査フロアに移動します。検査着の中は、ほぼスッポンポンなので、満員のエレベータはちょっと恥ずかしかったです。誰にもわからないんですけどね。

広い検査室の中に入ると、いろんな機械がついた検査台がぽつんと1台ありました。
飛行機のタラップのような踏み台を自分で上って検査台に横たわります。緊張します。
看護師さんが点滴やらなにやら支度をしてくれている間に検査担当の医師が登場します。
帽子をかぶってマスクしているのでどんな先生かわかりません。
「局所麻酔でやりますのでね、こんなふうに話しながらできるんですよ。」
と緊張を和らげるためか、声をかけてくれました。

カテーテルは右足の付け根の動脈から入れました。麻酔をしてしばらくすると、もう痛みは感じませんが、意識ははっきりしているのであまり気持ちの良いものではないです。

医師の手の動きから、私の体の中にカテーテルがどんどん入れられているのがわかります。
「もう、頭のあたりまで行きましたよ。」と医師。早っ。

頭の左右2カ所ずつ、計4カ所のポイントで造影剤を入れるようです。
どういう操作でカテーテルの向きを変えるのか謎です。

「(造影剤を)今から入れますね~。」と医師。その度に頭の中で「花火」が打ち上がるみたいに、まぶたの裏側がチカパカなりました(^^;

アンギオ検査は、事故さえ起こらなければ痛くも苦しくもない検査だと思います。その事故も患者さんが高齢であるとか、極端に状態が悪い時などごく希に起こる危険があるという程度だそうです。
ですから、必要以上に心配する必要もないと思います。実際に検査する前にも詳しい説明がありますし、疑問点や心配な点があれば納得がいくまで質問されると良いと思います。

検査が終わると、カテーテルを抜いたあとの傷口を医師が自分の指で押さえて止血してくれます。この間5~10分間ぐらい、結構長いです。

止血している間に、検査をしてくれた医師が「私、最初にお電話した○○です。」と自己紹介してくれました。検査入院の連絡をくれた担当医師でした。

「あっ、先生でしたか。お世話になります。」と私は寝たままご挨拶しました。
この医師は、その後手術入院の際に私の担当の「手術チーム」の1人で、退院時まで面倒をみてくれました。

検査後のこと

アンギオ検査は終わった後が大変です。出血したり、血栓ができて、それが脳まで飛んで脳梗塞になったりしないように、約6時間の安静を求められます。この間身動きできません。カテーテルを入れた方の足はぐるぐるにテーピングで固定されます。しかし、もう片方の足は曲げ伸ばし自由です。

検査室から病室へ戻る時も、病室担当の看護師さんがなんと1人で、16階の私の病室からベットを運んで来てくれました。
この看護師さんはベッドの”運転”技術(ドライビング・テクニック)も上手で、私はベットごとあっと言う間にエレベータで病室へと帰りました。

6時間の安静で何といっても辛いのが、トイレを我慢することです。
別に我慢しなくてよいのですが、立ち上がったりできないので、もし、したいと思ったら、”素敵なフォルムの例のアレ”のお世話になる必要があって、それには心理的な抵抗がありました。

本当は検査の時に注入した造影剤を早く排出するために、水をたくさん飲んだ方が良いと言われるんですけどね…。「尿瓶」をかかげた看護師さんに、コレ「大丈夫ですか?」と言われるのが辛かった(^^;

仕方がないので、タブレット端末に大量にダウンロードしてきた映画のビデオを何本も見て時間をつぶしました。

夕食の時間になってもまだ動けなかったので、夕食はすべて細切れにされたおかずが”串に刺さって”出てきました(笑)
ごはんはおにぎり状になっていますが、味はついていませんでした。でもこれらの配慮のお陰で、片方の腕だけで食べられました。

ごはんは”お握り”状におかずは全て”串に刺さって”出てきました。

<<続きます>>