前回の「片耳物語③」では、
私が罹った病気「聴神経腫瘍」について解説しました。
自分との”闘い”が始まる
前回は「聴神経腫瘍」という病気がいったいどんな病気なのか?ということについてご説明しました。
”良性”である可能性はかなり高いものの、腫瘍が存在する場所が非常に”よろしくない”厄介な病気であることがおわかりいただけたと思います。
ここで、お話は大学病院での最初の診察の後(片耳物語②)に戻ります。
何しろ手術までこの時から半年近くもあるわけですから、いろいろと思い悩むには十分に長い期間が残っていました。
本当に手術しかなかったのかとか、もっと早くわかっていればとか、10万人に1人という病気に何で自分がなってしまったのかとか…ネガティブな考えが頭の中に次々と沸き起こってきました。
朝起きてから夜眠りにつくまで(日によっては夜寝てからも)、このことは頭を離れず、自分が今やっていること、これからやろうとしていることの全てが無意味なことのように思えてきたのです。
当然、眠れなくなるし、日中は常に疲れている感じがしました。自分が透明な壁に囲まれているようで、自分の外の世界とつながっている気がしません。辛い毎日が続きました。
周りの人達からどんなに元気づけ、慰められようとも、この絶望的な気持ちは分かりっこないと思い込んでいました。なんともひどい話です。
でも自分ではわかってはいたのです。このままでは人として本当ダメになってしまう、病気に立ち向かうどころではないと…。
振り返ってみると、この時が一番辛かったなぁと思います。
自分を”維持”していくために ~ 心療内科へ
さて、このお話の時期はその年の暮れのあたりのことです。
重大な病気を抱えて平気な人はいません(と思います)。
病気への恐怖や将来への不安、何故自分だけがという被害意識なんかがごちゃ混ぜに押し寄せてきて、頭の中は大混乱です。
世の中はクリスマスや年末年始と浮かれた雰囲気で満たされていましたが、私の目には何とも空虚に映っていました。
このままではダメだ。別の病気になってしまう…。
本当は何もせずに家に閉じこもって過ごしたいというのが本音でしたが、仕事だって行かなくてはいけませんしね。
それに、何もしないことは逆に苦しくもあったのです。
そこで、私は以前お世話になった心療内科の先生(開業医)に相談することにしました。
ここはいつも予約でいっぱいで(大概の心療内科はそうみたいですが)、まともに予約すると1か月は先になってしまいます。
1か月はとても持ちそうにないと、意を決した私は医師に直接電話してみることにしました。そもそも取り次いでもらえるのかという心配もありましたが、受付に電話すると指定の時間ならお話しできますとのこと。
指定の時間になるのを待ち、私が電話しようとした時、その医師の方から伝えていた携帯に電話がかかってきました。
私は自分の身に起こったこれまでの経過を話し、なんとか助けてもらえませんかと医師にお願いしました。私の話は支離滅裂で説明はひどいものだったと思いますが、状況を察してもらえたらしく、2~3日うちに必ず時間を作るから来なさいと言ってくれました。
それから約束どおり数日後に医師の診察を受け、何種類かの薬を処方され、手術後も面倒みるから心配しないようにとおっしゃっていただきました。
そして、私の気持ちが落ち着き、病気に対してようやく正面から向き合えるようになったのは正月休み明けのことです。
精神面の問題は、周りの人達にはなかなか分かって貰えない、とても苦しく辛いことです。自分一人で耐え切れそうもない時は、迷わず専門家へ相談するのが良いと思います。
私自身、その時”本丸”の病気の治療はまだ始まってもいなかったのですが、ここはいろんな人の助けを借りてでも乗り切っていく他ないなと思いました。
>>【続きます】<<