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片耳物語③ 〜 聴神経腫瘍

片耳物語

闘病に際して

まー
まー

今までちゃんと説明していませんでしたが、
ここで、「聴神経腫瘍」について解説します。

敵を知る

「彼(か)を知り己を知れば百戦殆う(危う)からず」
孫子の兵法でとても有名な言葉です。
一度ぐらい聞いたことがあるかもしれません。

私はこの言葉が大好きで、これまでいろんな場面でピンチに陥った時に、それを乗り越えるために自分に言い聞かせてきた言葉でもあります。
私の父親がこういうのが好きなので、その影響もあるかもしれません(笑)

『孫子』の「謀攻」に、

彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず
彼を知らずして己を知れば、一勝一負す
彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し

というのがあります。
これらの意味は、

敵と自分の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはない
敵情を知らないで自分のことだけを知っているのでは、勝ったり負けたりして勝負はつかない
敵のことも自分のことも知らなければ必ず負ける

つまり、「戦において、敵と自分のことを熟知していれば負ける心配はない」
というようなことを言っている訳です(^^)

自分が相対することとなった「聴神経腫瘍」という病気と闘うためには、まず相手(聴神経腫瘍)のことをよく知ることだと思いました。

「敵」と対峙するにあたって

私が”闘病記”を書いた目的の一つとして、「聴神経腫瘍」という病気で苦しんでいる、又は今後苦しむかもしれない方、若しくはそのご家族の方々にこの病気のコトを知ってもらい、精神的・肉体的な苦痛を少しでも和らげる為に参考にしていただけたら、という思いがありました。

この「聴神経腫瘍」という「敵」と戦う為にまずは、相手の正体を知らなければなりません。
いたずらに怖がっているだけでは、打ち勝つことは出来ないのです!

(実のところ私も、最初調べるのが怖くてネットを使うのをためらっていました…。)

それから、戦う為の武器。様々な治療法や対応できる医療施設、専門の医師について調べます。

そして一番重要な、戦いに臨む自分の心構えをキチンと整えることが必要です。

(ひとり患者として、自分の狭い体験を通じて、かなり大ざっぱな説明しかできないので、正確に知りたい方はちゃんとした資料を確認したり、お医者さんに質問して欲しいと思います。)

聴神経腫瘍とは

「聴神経腫瘍」の概要

そもそも「聴神経」というのは何でしょうか?
「聴」という文字から、どうやら「聴覚」に関係する神経だろうという推測はできます。

「聴神経」とは、脳の左右に12対ある主な脳神経のうち8番目の神経( 第VIII脳神経 )で、耳(内耳)につながるところ部分で聴覚を伝える神経「蝸牛神経」と平衡感覚を伝える神経「前庭神経」に分かれています。(「前庭神経」はさらに2本に分かれています)

「聴神経腫瘍」のほとんどは、このうち前庭神経を包む「鞘」の細胞から発生するそうです。
(ほぼ99%! だから「聴神経鞘腫」とも呼ばれるます)

※ちなみに他の脳神経ですが、第Ⅰ脳神経は「嗅覚」、第Ⅱ脳神経は「視覚」を伝える神経です。

【東海大学医学部脳神経外科のサイトより転載】
(松前光紀著「脳腫瘍の理解」クリニカルスタディvol.29,no.14,2008年 メヂカルフレンド社 イラスト:北原 功 )

主治医の説明では、私の場合、腫瘍による圧迫のために右側の前庭神経の2本ともだいたい50%ぐらいしか機能していない状態でした。
普通はこれでめまいやふらつきなどが起こるわけですが、私にはそういう症状は、ほとんどありませんでした。

おそらく、ものすごくゆっくり腫瘍が大きくなったため、左側の同じ機能が徐々に右側の機能を代替していたのではないかと思います。(私の解釈ですが...。)

もともと良性の腫瘍で、大きくなる速度も一年に1mm~2mm程度なので、小さいうちは慌てる必要は無く、経過観察する場合も多いようです。

また、治療を行う場合でも小さいうちなら、手術の他にガンマナイフ(放射線)による治療も選択できます。こちらは頭に穴を開けることなく、つまり手術のリスクや苦痛無く治療が可能です。

デメリットしては、腫瘍が大きくなるのを止めるのが目的なので、手術のように根治することは無く、また腫瘍の細胞を取り出すことがないので、本当に良性なのか組織検査で判定することができません。非常に稀ですが放射線により腫瘍が悪性化する例もあるそうです。

私の場合、見つかった時に約31mmと既に大きくなっていたので、経過観察は意味ないし、放射線もサイズオーバーで不可、手術しか選択の余地がなかった訳です。

放っておくとさらに腫瘍が大きくなり、人が生きて行くのに重要な役割を持つ脳幹などを圧迫して命が無くなります(^^;

この病気が厄介なのは、腫瘍が小さいうちに何か症状が出て見つかれば良いのですが、腫瘍が非常にゆっくり大きくなるため、私のようにかなり大きくなってから症状が出て気づくというパターンが多いところです。

脳ドックでも定期的に受けていれば別ですが、普通の人はそんなのやりませんよね。お金もかかるし...。

もう少し詳しく

「聴神経腫瘍」については、それこそ昼夜を分かたず、インターネットで調べまくりました。

様々な日本の大学や病院のサイトにも詳細な説明が記載されていましたが、ビジュアル的にも分かりやすかったのが、アメリカはミネソタ州ロチェスター市に本部を置く総合病院メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)のサイトに掲載されていた内容でした。

「クリニック」というと何か小さな病院を連想しますが、「全米の優れた病院」(USニューズ&ワールド・レポート誌)の1位にランク(2018-2019版)され、医科大学を併設する立派な病院です。

「クリニック」の名前はアメリカ開拓時代に、イギリスから移住した医師たちによる辺境の地で始まった医療活動に起源があるからだそうです。
(以上ウィキべディア:メイヨー・クリニックを参考)

(メイヨークリニックのサイトより)
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/acoustic-neuroma/symptoms-causes/syc-20356127

グーグル先生の助けを借りた日本語訳の内容は以下のとおりですが、非常にわかりやすくまとまっていてこの病気のことを知らない人に簡潔に説明するのに役に立ちました(^^)

聴神経腫瘍の「概要」として…。
『前庭神経鞘腫とも呼ばれる聴神経鞘腫は、非癌性で通常は成長が遅い腫瘍である。
内耳から脳に至る前庭神経に発生する。この神経の枝はバランスと聴覚に直接影響する。そして聴神経腫瘍からの圧迫は耳鳴りと難聴を引き起こす。』

『聴神経腫瘍は通常、この神経を覆うシュワン細胞から発生し、ゆっくりと成長するかまったく成長しない。まれに、それは急速に成長し、脳を圧迫し生命機能に干渉するのに十分なほど大きくなる。

聴神経腫瘍の治療法には、「定期的な観察」、「放射線療法」、「外科的切除」がある。

症状としては…。
『聴神経腫の徴候や症状はしばしば微妙であり、発症するのに何年もかかることがある。
それらは通常、聴覚神経および平衡神経に対する腫瘍の影響から生じる。 顔面の筋肉や感覚(顔面神経および三叉神経)を制御する隣接神経、近くの血管、または脳構造への腫瘍からの圧迫も問題を引き起こす可能性がある。

腫瘍が増殖するにつれて、より顕著又は重篤な徴候や症状を引き起こす可能性が高くなる。』

聴神経腫瘍の一般的な徴候と症状は…。
『難聴は通常は徐々に、(一部のケースでは突然に)
そして片側だけで発生する。
その他、
耳鳴り、バランスの崩れ、めまい
顔面のしびれ、
筋肉の動きの衰弱又は喪失

まれに、
腫瘍が脳幹を圧迫して生命を脅かすほど大きくなることがある。
片耳の難聴、耳鳴りがしている、またはバランスに問題がある場合は医師に相談するのが良い。

聴神経腫瘍の早期診断は、完全に難聴になってしまうことや頭蓋骨内の致命的な体液の蓄積などの深刻な結果を引き起こすのに十分なほどに腫瘍が大きくなるのを防ぐのに役立つ。

そして、謎の発生原因は…。
聴神経腫瘍の原因は22番染色体上の機能不全遺伝子であるようと考えられている
通常、この遺伝子は神経を覆うシュワン細胞の増殖を制御するのを助ける腫瘍抑制タンパク質を産生する。この遺伝子の機能不全の原因は明らかではない。
また、聴神経腫瘍のほとんどの場合は、識別可能な原因はない。』

我々よりも、
もっと深刻な症例があることもわかりました…。

『この不完全な遺伝子は、
神経線維腫症2型という
(頭の両側の平衡神経の腫瘍の成長を伴う)
まれな疾患(両側前庭神経鞘腫)にも受け継がれている。』

つまり、通常「聴神経腫瘍」は左右のどちらか片側に発生する例がほとんどですが(私も右側のみ)、両側に発生する神経線維腫症2型というタイプがあるのです。

『聴神経腫瘍の唯一の確認された危険因子は、まれな遺伝性疾患(神経線維腫症2型)を持つ親を持つこと。神経線維腫症2型は、聴神経腫瘍症例の約5パーセントを占める。神経線維腫症2型の特徴は、頭の両側の平衡神経、および他の神経に非癌性腫瘍が発生すること。

神経線維腫症2型(NF2)は、常染色体優性疾患として知られている。
つまり、1人の親(優性遺伝子)だけで突然変異を受け継ぐことができる。
冒された親のそれぞれの子供は、それを継承する可能性は五分五分である。』

合併症としては…。
『聴神経腫瘍は、
以下を含む様々な恒久的な合併症を引き起こす可能性がある。
○難聴
○顔のしびれと脱力
○バランスの難しさ
○耳鳴り
また、大きな腫瘍が脳幹を圧迫し、脳と脊髄の間の正常な体液(脳脊髄液)の流れを妨げることがある。この場合、液体が頭の中に蓄積し(水頭症)、頭蓋骨の内側の圧力を増加させる可能性がある。』 

前回も触れましたが、再発の可能性があること、また、片耳の機能を失ってしまったことでこの状態には一生付き合って行かなくてはいけない訳です。

したくなかった経験ですが、自分自身の今後の人生や同じ病気を患った人たちの社会生活をせめて精神的な部分だけでも何か助けになることができないかなぁというのが、現在の私のささやかな望みです(^^)

>>【続きます】<<