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片耳物語① ~ 闘病のはじまり

片耳物語
まー
まー

聴神経腫瘍という病気に罹りました。
この病気が発覚したのは2017年の12月のことです。

はじめに…「チョウシンケイ・シュヨウ」発覚

「チョウシンケイシュヨウ?」
生まれて初めて聞く病名でした。

「こういう風に書きます、『聴神経腫瘍』」と医師がメモ用紙にボールペンで書いてくれました。
2017年もあとひと月少々となった11月の終わり頃のことです。

その数週間前に、右耳の音がこもるような感じがずっと続くという”異変”を感じて、”一箇所目”の耳鼻咽喉科医院で診てもらいました。

”一箇所目”というのは、その後”2箇所目”の耳鼻咽喉科診療所を経て、市立の総合病院で検査を受けることになり、前述の診断を得ることになったからです。

Acoustic neuroma (アコーステック・ニューロマ)という英語の軽そうな響きとは裏腹に、そのとても深刻な内容と「聴神経腫瘍」という日本語の病名は、なんて重厚で恐ろしげなんだろうと、病名を告げられてからいろいろ調べているときにぼんやり感じたものです…。

診断を告げられてから、自分自身の中で随分葛藤がありましたが、自分にもたらされたこの病気とそれからの生活や気持ちの推移について大変主観的ではありますが、同じ病気を経験された方、家族や知人にこの病気を持つ方、またはこの病気の心配のある方がお読みになることを想定して記録を残していこうとう決意に至り、この小文を書くことになったわけです。

最初の経過

そもそも『聴神経腫瘍』ってどんな病気なのか?ということが気になると思いますが、それはまた項を改めてたっぷり説明することにします。

始まりは昨年の10月のある日、仕事中に取った電話の相手の声がところどころ雑音が入ったように聞き取りにくく感じたことでした。

「携帯電話かな?〇〇さんの声、ずいぶん聞き取りにくかったよ。」
電話を終えたあと、取り次いでくれた同僚にそう話すと、
「いや、内線ですよ…受話器の故障かな?」という同僚の答え。

もちろん電話は故障していませんでした。
私の耳がおかしかったのです…。

1番目の耳鼻科医院

その耳鼻科では通常の聴力検査の他、骨伝導による検査も実施。やはり違和感のある右耳の聴力が低下していることが判明しました。

そこの医師は、「突発性難聴というのもあるけど、そうだとしたらもう手遅れだね。」とあっさりおっしゃいました。先生曰く、突発性難聴だと聞こえにくくなってから48時間以内に治療をはじめないと効果がないと。

「ほかに原因があるかもしれないけど、3か月したらまた来て。その時もっと聴力が落ちていたら別の検査を考えます。」

なんともつれない診断に納得いかず、とぼとぼと家に帰りました。なんだか右耳が一層閉塞している感じがしました。

2番目の耳鼻科医院

最初の耳鼻科でどうにも納得がいかない私は、家に帰ってから突発性難聴についてインターネットで調べまくりました。

すると治療開始が2週間程度空いていてもギリギリ間に合うかもしれないという記述がいくつか見つかり(この時は自分が突発性難聴だと思い込んでいた)、ダメもとで翌週の土曜日に市内の別の耳鼻科医院を受診しました。(もっと早く行きたかったのですが、仕事の都合で1週間後に…本当に突発性難聴の疑いのある人はすぐに受診してください。一刻を争うそうです。)

こちらの先生は女医さんでした。私の症状をじっくり聞いてくれたあと、この症状は、突発性難聴の他にもごくまれに頭の中に腫瘍ができて聴こえに関わる神経を圧迫している場合もあるんですよ…というお話しをしてくれました。

しかし、この時の私は自分が突発性難聴なんだと思い込んでいたので、あとの方の原因は聞き流していました…(^^;

とりあえず、突発性難聴の治療をしてみましょうと、薬を出してくれることになりました。
突発性難聴の治療として処方された薬は、プレドニンというステロイド剤のほかメチコバールというビタミンB12を主成分として傷ついた神経の回復させる薬(ご存知の方はあの赤いパッケージの薬です…。)それからアデホスという 内耳障害によるめまいなどの症状に用いる薬です。

※ ちなみに、このアデホスの有効成分はATP。中学生のときに理科で習った 人体における基本的なエネルギー源として働くあれです。「アデノシン三リン酸 (ATP)」。

これがどんな風に内耳障害に効くのかわかりませんが。このときは薬をもらって安心したせいで余裕ができたのか、よけいなことまで調べていましたね。
突発性難聴の場合、 これらの薬で治療しても完治する確率は3分の1。3分の1は症状が緩和される程度、残り3分の1は改善しないと説明されたのですが、これでダメならしょうがないなと自分を納得させて、1週間分の薬をもらって帰りました。

しかし…..。

2番目の耳鼻科医院その2

2番目の耳鼻科医院で突発性難聴の治療のための薬を出してもらい、1週間服用してみましたが聴力の回復は見られず。

医師は、「大きな病院で検査してもらった方がいいかもしれませんね ~ MRIとか…」と。
それでももう少し様子を見ましょうかと、この時はもう1週間分、今度はステロイド剤抜きで(あまり続けると体の抵抗力が弱まるということで)、メチコバールとアデホスコーワを処方されて帰宅しました。

結果的に薬の効き目は無かったわけですが、何も処方されないよりは、この期間少なくとも精神的にはずっと楽でした。最初の医院の医師も確かに合理的な判断で誤ってはいないとは思いますが…。
医師の対応の違いというものを改めて感じたわけです。

しかし、さらに1週間後の聴力検査では、何と少し数値が良くなっているではありませんか!
「このままもう少し様子を見ますか?」という医師の言葉に、
「念のため、精密な検査を受けたいのですが」と私。

「わかりました。もう紹介状は用意してありますよ。ここからはA病院かB病院が紹介できますがどちらにされますか?」と医師。なんと、準備が良い!

自宅から近い公立の総合病院であるA病院を紹介してもらうことにしました。
その病院の耳鼻科は完全予約制で、月~水の3日しか外来の診療が無いということで(田舎だからかなぁ)、その日はちょうど火曜日。
受付の方が今から行けるようなら予約しますよと言ってくれ、お願いするとすぐに電話で予約を取ってくれました。感謝です。

そして、紹介状をもらって、その足で3番目の耳鼻科を受診することになります……。

公立総合病院耳鼻科へ

検査1日目

1番目の耳鼻科医院を受診してから約3週間後、3番目の耳鼻科、公立総合病院の耳鼻科を受診することになりました。
病院に到着したのは午前9時半ごろ。1日に2つの病院をはしごするのは初めてでした(^^;

さて、ここでも聴力検査(この日2回目)のあと、念入りに耳の診察。
「見える限りでは耳はきれいです。」と医師。
そして、「診療所の先生からご意見のあったように、CTとMRIを撮りましょう」と続けました。

この日は飛び込みの受診で検査の予約をしていなかったため、比較的検査時間の短いCTをフリータイムの順番待ちで入れてもらい、50分近くかかるMRIは翌日の予約となりました。(それでも最短でした)

CTは以前肺の精密検査で受けたことがあったので今回は2回目。待ち時間は長かったのですが、検査自体は数分で終わりです。痛くも痒くもありません。

検査2日目

翌日のMRIは午後1時から。造影剤を使って撮影するので朝ごはん抜きです。

MRIは初体験。こちらも痛くも痒くもないですが、50分間ゴンゴン、ガンガンという大音量を発する機械の中でじっとしているのはなかなか辛いものがあります。途中で造影剤を注射されるのですが、この時はあの、「頭がか~っと熱くなる感じ」はまったくありませんでした。(後日、手術を行う病院に検査入院した時には油断していて、急に頭が熱くなって驚くことになります。)

この段階ではまだ念のための精密検査だと思っていたので割と平気でした……。

検査結果を聞くために次の診療の予約を翌週の月曜日に取りました。

それまでの経過はこんな感じです。

<火曜日> 2番目の耳鼻科医院からの照会&総合病院の受診+CT検査

   ↓

<水曜日> 総合病院でMRI検査

   ↓

<翌週月曜日> 検査結果を聞く

耳鼻科から脳神経外科へ

耳鼻科で検査結果を聞く

CTとMRIの検査を受けた翌週の月曜日、検査結果を聞きに再び総合病院の耳鼻科へ。

この時までまさか自分が大変な病気にかかっているとは露ほども思っていなかったので、それほどの緊張感もなくやって来ました。

(この時、自分はまだ突発性難聴だと思っていました。治療が間に合わず、殊勝にも、これから右耳が不自由なことに慣れていかなくてはいけないなと考え始めてもいました。)

ところが...です。

CTとMRIの画像を見ながら医師が説明します。

医師)「まず、CTの画像です。この内耳の部分は特に異常はありません。でもここから奥の部分はCTではよくわりません。」

私)「はぁ」(確かに脳の部分は真っ黒でなにも写っていないように見えます。)

医師)「MRIだとそこがよくわかるんです。」(と、頭の輪切り画像を上(下?)から少しずつスクロールしながら見せてくれます。)

医師)「ほら、ここ。左側には何も無いのに右側には明らかに何かあるでしょ?」

私)「・・・・・。」

確かに脳幹?の右側にかなり大きそうな丸い白い塊のようなものが素人目にもはっきり写っていたのです。

私)「大きさはどのぐらいですか?」

医師)「2cm、いや3cmぐらいはあるかな?」とパソコンのディスプレイにスケールを当てながら答えました。

医師)「こちら(耳鼻科)では、そのままにして良いのかどうか判断しかねますので、脳外科のほうの意見を聞きたいのですが、ご都合はいかがでしょうか?」

私)「・・・・・。」(一瞬、この先生は何を言っているのか、頭が働きません。衝撃的でした。)

私)「あの、できるだけ早い方が...。」

医師)「それでは、え~と明日の午前中はいかがですか?」

私)「はぁ明日?...お願いします。」

という具合に非常に目まぐるしい展開ですが、3つ目の病院の2つ目の診療科の受診が決まりました。

>>【続きます】<<